2013年  杉田一弥作品集 『香玉』

 

著者:杉田一弥‥(活花)

発行:青幻舎

写真:木村羊一

ブックデザイン:西岡 勉

印刷:サンエムカラー 

編集・印刷設計:三浦啓伯(玄元舎)

2013年2月20日発行

定価:本体6000円+税

活花作家である杉田一弥さんの作品集制作のお手伝いをさせていただいた。

 

Futoi,Togarashi


写真は木村羊一さんが5年にわたって撮り続けられたもの。
ブックデザインは西岡勉さん。西岡さんには印刷設計のアドバイスもいただいた。

 

Laceflower,Zenmai


現代において活花は、どのような形で可能か?
杉田一弥さんは、それぞれが強い自己主張をもつ現代陶芸作家の器を使って生けることで、それを実現された。
それも、ポップアートとして活花が可能であることを示すことによって、中川幸夫さんが切り拓いた現代活花の世界をさらに一歩進められたのだと思う。

Kabocha,Karasu-uri,Suzume-uri


杉田さんは、活花を生業(なりわい)とされている方ではない。
「僕の活花は旦那芸なんです。」というお話をお聞きしたことがある。
そのときには、あまりその意味はわからなかったと思う。
考えてみれば、旦那芸は金持ちのお遊びということとは全く違うものだ。
旦那芸で名を成したということで思い浮かぶのは、陶芸の川喜多半泥子であり、絵画の伊藤若冲である。
いずれも、創作は生業ではなかった。逆に生業としないことで、同業作家の流儀や買い手の目を気にする必要がないというメリットが生まれた。だから、あれほど個性的な表現が可能だったのだ。
自分の表現したいものを、何にも拘束されることなく表現する。
それが旦那芸ということであると思う。
杉田さんの活花は、この意味で旦那芸と呼ぶにふさわしい。
木村さんは、その意味をよく理解されたうえで撮影し、写真作品という形にまとめられている。いわば共犯者である。
であれば、旦那芸にふさわしい、今までに存在しないような造本・印刷がしたい。
これが、この本の制作のコンセプトとなった。

 

   Hananasu


杉田さんのご意向をお聞きし、西岡さんとすりあわせて具体化し、青幻舎さんのご了解をいただきながら進行していったが、印刷設計は以下のようなものである。
風合いはあるが印刷するとくすみがちになってしまう用紙に、思いきりコントラストをつけた製版をして、限界を超えるほどの高濃度で印刷をする。このことで、用紙の風合いと濃淡の幅の両方を確保する。そしてインキの沈み込みによるくすみをさらに抑えるためにニス刷りをする。
バックの黒は今まで印刷で表現されたことのないほどの濃さにして、花はその黒闇から浮かび上がって極限までの鮮やかさを示すことができるように彩度をあげる。高濃度で印刷しても彩度が落ちないように、通常の網点のある印刷ではなく、FMスクリーンを使う。
無茶な設計をした結果、サンエムカラーの製版・印刷の現場と新日本製本さんには本当に厄介をおかけした。
制作期間は1年半がかりのものとなった。

 

                                   Bara,Amateur Langsat,Kisasage


 

 

この作品集は、日本書籍出版協会主催の「第48回 造本装幀コンクール」において入賞し、日本書籍出版理事長協会賞をいただきました。

 

 

 

作品は、2014年7月2日から5日に東京ビッグサイトで開催された東京国際ブックフェアで展示されました。

 

開催中に行われた表彰式に出席し、ほかの入賞作品を目にすることができたのは大変良い勉強になりました。

 

入賞作品『香玉』への講評のページです。 ⇒