2013年 『表具を楽しむ』

     

  著者:池 修

  発行:光村推古書院

  印刷:株式会社サンエムカラー

  サイズ:B5

  総貢: 127貢 

  平成25年12月28日発行

  定価:本体2800円+消費税

 

 

朝日新聞3月2日付読書欄【視線】に、この本の書評が掲載されました。⇒こちらからデジタル版を読むことができます。

著者の表具に対する思いが、美術の専門家から美しい言葉で賞賛されています。

制作に関わった作品がこのような評価を受け、感無量です。

表具(掛け軸の装幀)について人は、絵や書を吊すためのものとして、機能の面からだけ見て深く考えようとしない。つまり、表装された作品をみても、表具は無視しているのだ。

 

池修さんのこの著書は、表具とはどのようなものかを、ご自身が表具された実例に沿って解説された本である。

といっても、池さんは、表具師ではない。蒐集された書画を、蒐集された裂(きれ)を使って、表具師に指示をして、表具しているのである。このような方は、ほんとうに稀だと思う。好みの裂の色くらいは伝えても、あとは表具師に任せてしまうというのが通例である。私も、仕事柄何本も掛け軸を作ってきたが、細かく指示はしてこなかった。正確に言えば、よくわからないので、指示できなかったのだ。

 

池さんは、本紙と対話して本紙を理解することから始めることを教える。内容が読み込めたら、まず表具の形式を選ぶ。一般の大和三段表具(行)と言われるものにするか、本尊表具(真)と呼ばれる仏画などに使われる格の高いものにするか、あるいは文人表具(草)という粋で簡素なものにするか選ぶ。

 

次には、裂のとりあわせ。どのような裂をどこに配置するか。ここが、この本の真骨頂だ。裂の色を選ぶにしても、本紙の内容に沿って季節を考え、その季節に合う色を考える。それは五行思想に及ぶ。春は青、夏は朱、土用は黄、秋は白、冬は黒。あるいは、季節ではなく縁の色を選ぶ。これは有職故実に基づく。裂の種類や模様にしてもそうだ。高価な裂が良いわけではない。金紙の入った金襴がいいときもあれば、紙のほうがいいときもある。本紙の内容に一番合うものを選べというのだ。TPOをわきまえろということだ。

 

本文に目を通し、カラーで掲載された実作とそれへの解説をぱらぱらと読むと本当に楽しくなる。それは、池さんが表具がお好きだからだ。ご自分の手元にきた本紙を愛され、それにどのような表具をすれば一番ふさわしいかを考えられ、表具して眺め、無事後の世に伝わることを望む。たんに教科書のような説明書でないからすばらしい。

 

写真撮影をされた「たやまりこさん」は、表具の模様がよく見えるように細心の注意をはらって撮影された。でも、表具は平面ではない。凹凸があり、同じ裂がライトの光を受けて反射したり、逆に光が死んでしまう箇所もある。印刷にあたっては、池さんにお聞きしながら、裂の模様が平均になるように、手を加えた。

左頁に掛け軸、右頁に解説を載せた。

 

上の掛け軸の表具の裂が、本紙の表紙に使われている。